かばんの歴史
かばんの定義
身の回り品の保護または、運搬を目的とした容器のうち主として、素材を問わず、携帯用に供する容器として用いるもの。(ハンドバッグ、小物入れは除く)
かばんの経緯
1868年(明治元年)以前にかばんと同じ用途に使用されたと思われるもの。
鎧櫃(よろいびつ)、葛篭(つづら)、柳行李(やなぎごうり)、竹行李(たけごうり)、胴乱(どうらん)、経笈箱、挟箱、薬籠(薬入れ)、台箱(床屋の道具入れ堤手付き)、振分けもの入れ(柳、竹、紙製)、その他のかばん。
かばんの名称
カバス(オランダ語)、挟板(キャハン、支那語)、堤嚢、革盤、革包等々種々な名称、語源があり、以上の中の革包が転化して鞄(かばん)になったと言われています。
鞄の諸説を集約しての呼称
革の工人、革具師、馬具師、文庫職人等々に依る発想で、1869年(明治2年)頃から1877年(明治10年)頃にかけて通称、胴乱が鞄になり、「鞄」漢字の常用は1881年(明治14年)頃と言われています。以上、現在にあっては古来からの確定的要素をもつ文献がなく、推測的なものが多いようです。
携帯用具としてのかばん
胴乱(どうらん)
江戸時代以前からあった物入で後に形状に変化を加えたものが製作され、主として革が使用された。寸法は21cm~24cm位のものが多かったようである。
抱鞄(かかえかばん)
別名は折鞄で用途は書類入で型は二つ折、四つ折等のものもあった。寸法は、18cm~38cm位で、1921年(大正10年)頃より手提式が多くなり、1950年(昭和25年)頃より36cm~38cm位の牛革製抱鞄がビジネス用として製作された。(今の中学生用、高校生用の学生鞄は同種である)
ゲンコ
口金を用いた手提鞄で1880年(明治13年)頃から製作された。寸法は15cm~24cm位であった。
手提丸型
1881年(明治14年)頃よりのものである。
学生鞄
1881年(明治14年)頃より作られ、最初はズック製で後に革製も作られた。
化粧箱
1889年(明治22年)頃から製作され、今は化粧ケース・トレインケース等と言われている。
(写真は現在のもの)
図嚢(ずのう)
1892年(明治25年)頃より陸軍軍人用として使用され、1985年(昭和60年)頃より製作されている。皮革製タテ型メンズショルダーバッグの原型である。
手箱
1908年(明治41年)頃より製作され、今のアタッシェケースの前身である。
背嚢(はいのう)
陸軍将校用背嚢を改良したもので、大正天皇が学習院に入学に際して時の総理大臣伊藤博文より通学用として献上されたものと言われている。其の後一般化され、ランドセルとして普及し定着している。
ボストンバッグ
1924年(大正13年)頃から製作され、主として開口部に口金枠をつけた二本手の手提鞄(革製)で、アメリカボストン大学の学生が使用していたところからボストンバッグの名称が用いられたと言う。1932年(昭和7年)頃より口金枠の代わりにファスナーを使用したものが製作され、材料も皮革、合成皮革、布帛等を使用し、新型、変型等もある。
サンプルケース
1930年(昭和5年)頃からのもので、大きさも42cm~45cm位のものが多く製作されている。(主として牛革製である)
リュックサック
登山用が主体であるが軍用としても使用され、現在は新型、変型等も製作され、登山用、ハイキング用、又小さなものはタウンザックとして多用され、材料は皮革、合成皮革、布帛等がある。
ダレスバッグ
1951年(昭和26年)頃、アメリカの国務長官ダレス氏が来日した時に持ってこられた鞄で、後日ダレスバッグと名前をつけられ多用されている。
ブリーフケース
36cm~42cm位の主として革製書類入鞄である。
書類入鞄
別名スピードケース、クラッチバッグ等々と呼ばれている。
その他のかばん類
旅行用具としてのかばん類(主として大型、箱物等)
丸型
1874年(明治7年)頃より製造された鞄で、材料はズック及び革で芯はウスイ板張であった。寸法は45cm~66cm位のものである。
櫛型(くしがた)
1879年(明治12年)頃より製造され、材料はズック又は革製で芯はウスイ板張り、大きさは66cm~68cm位であった。今のトランクの変型である。
トランク
1877年(明治10年)頃から輸入され、主として皮革製で後にファイバー、鉄(トタン)張等で製作され、汽船による旅行者の需要が多かった。
畳み鞄(たたみかばん)
1882年(明治15年)頃から作られ、折鞄とも言われ、材料はズック製で後に皮革等でも作られ、寸法は45cm~78cm位である。
半畳み鞄
1889年(明治22年)頃から製作され、トランクの変り型で長期旅行用として使用された。大きさは60cm~80cm位である。
大割れ鞄
1889年(明治22年)頃より作られ、トランクの変型で中央に口金枠がつき、大きく左右に開くもので、今はグラッドスト-ン鞄と言われている。
合財型鞄
1889年(明治22年)頃より作られ、ズックと革のコンビで、寸法は36cm~45cm位のものである。
棒屋根鞄
1898年(明治31年)頃から作られ、後に二本手も製作され、平屋根、丸屋根等変型も作られた。
服入れ鞄
1897年(明治30年)頃から作られ、後のスーツケースで材料は革製が主であったが、ズック、ラインテックス、ジュラルミン、ファイバー等々多種である。